C01:技能発達班が「第3回技能習得と発達についての人類学的研究研究会」を開催しました

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開催日時:2021年9月18日 13:30-17:30

開催場所:オンライン

使用言語:日本語

プログラム:
13:30-13:40 主旨説明ほか
13:40-15:10 研究発表I
「バリのガムラン音楽における演奏技術の習得と発達」
鈴木良枝(東邦音楽大学)
15:10-15:30 休憩
15:30-17:00 研究発表II
「「伝統」の「継承」と状況的学習ー石垣島と与那国島の事例より」
緒方良子(北九州市立大学大学院)

報告概要:
 研究会では、2つの発表について議論を行った。研究協力者の鈴木良枝氏(東邦音楽大学)が、博士論文の成果の一部である、バリのガムラン音楽における演奏技術の習得と発達について発表した。ガムラン音楽は、主に宗教的な儀礼や祭りにおいて、さまざまな打楽器をもちいて2〜20人で演奏されている。主な演奏者は10~40代の男性で、地方では伝統的に演奏グループなどが組織され、そこで演奏技術が継承されてきた。鈴木氏は、ゴン・グラダッグと呼ばれる演奏グループに注目し、彼らが、古い演奏スタイルを保持しながらも、段階的にテンポ(以下、現地語でパパ・ビウ)を上げて緊張感をもたらすような独自の演奏を展開していることを見出した。また、リード奏者別にパパ・ビウを比較した結果、年代を経てパパ・ビウが変化していることを指摘した。質疑では、生涯学の研究プロジェクトにおいては、楽器の使い方と音楽実践との関わりも含めて、演奏技術の習得と発達について検討していくことも問題提起された。
 研究協力者の緒方良子氏(北九州市立大学大学院社会システム研究科)は、石垣島と与那国島の芸能の学習について自らの習得経験をふまえて、その継承の特徴について報告した。石垣島での事例である八重山古典民謡の学習については、①「教え込み型」学習(カリキュラムに沿った段階的な学習)、与那国島での地謡の学習については②「滲み込み型」学習(自発的な模倣が学習を支える)と特徴づけた。緒方氏は、実践共同体となる島の生活形態や文化が変化することで伝統芸能は衰退し、その際に強く「伝統」の継承が意識されると指摘した。質疑では、それぞれの学習形式において、習得や教授における正しさや正解のようなものがあるのかといった点と実際の継承の状況について議論を行なった。